オンライン入試を実施するにあたっての注意点

新型感染症の流行により、いまだ休校を続ける大学は少なくありません。普段の講義をオンラインで受講するのはそろそろ慣れた方も多いと思いますが、入試までオンラインで対応するとなれば、勝手が違ってくることでしょう。 今回はオンライン入試に焦点をあて、実施にあたっての注意点や起こりうるリスクの内容、大学側として準備しておくべきことを紹介します。


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オンライン入試を行う上で注意したい3つのポイント

まずはオンライン入試を実施するにあたり、注意すべきポイントを3つ解説します。どれもオンラインならではのポイントなので、しっかり覚えておきましょう。

本人確認

従来の入試では、受験票を机上に置いておくことで本人確認を行います。しかしオンライン入試では、PCの向こう側で入試を受けている受験生が「本当に本人なのかどうか」を判断しづらい場合があるでしょう。

WebカメラをONにし、受験生の顔を確認できたとしても定かではありません。本人確認をしっかり行う方法としては、公的証明書(学生証など)をWebカメラ上で提示してもらうことなどが考えられます。

公平性

入試時間には限りがあります。その限られた時間の中で、ある受験生の通信環境ではスムーズに問題が表示されているのに、別の受験生の通信環境では表示に時間がかかってしまうといった差が出てしまいます。

また、PCのスペックによって動作環境に差が出てしまうこともあります。このような環境の差をどのようにカバーするかも、オンライン入試を行う上での大きな課題です。

また、ネットを使い慣れている人とそうでない人とでは、オンライン入試への対応にギャップが生まれる可能性もあるため、あらかじめ入試の流れや操作方法を事前に知らせておくようにすることが大切です。

不正排除

PCの向こう側で学生がどのようなスタイルで入試を受けているかは、大学側から確認しづらいのが事実です。

また、従来の入試では試験監督が開始と終了の合図を出すため、それ以外の時間で問題に取り組むことは難しくなっています。しかしオンライン入試では、しっかりとシステム上で時間を区切らないと、決められた時間以外でも解答欄を記入できてしまう可能性があります。

これでは「不正をした者が有利」という不公平な結果を生み出してしまいます。これらの不正をいかに排除するかも、大学側としてしっかり検討すべきところです。

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オンライン入試におけるリスクへの対処法

上記の注意点を踏まえ、ここではオンライン入試で起こりうるリスクをまとめていきます。併せて対処法も解説しますので、これからオンライン入試の導入を検討しているご担当者さまは参考にしてみてください。

通信環境を整えておく

入試中、通信エラーにより解答欄がすべて白紙になってしまうという事態は避けたいものです。また、入試途中でサーバーがダウンし、表示ができなくなってしまうといったリスクも想定しておくべきです。

アクセスが集中するとサーバーが落ちやすくなるため、アクセス集中に耐えられるサービスやシステムの活用を検討しましょう。

加えて、オンライン入試で使うツールが正常に動くかどうか確認することも大切です。そのため、大学側は入試画面の動作確認テストを入念に行う必要があります。

不正防止策を用意しておく

前述したとおり、入試中の不正をいかに防止するかはとても重要です。できる対策としては、在宅による受験はせず、外部の試験会場を借りてオンライン入試を実施することが挙げられます。試験会場であれば自分以外の受験生たちの目があるため、不正に走らずに済むでしょう。

また、試験中はオンライン上で試験官を付けさせることも大切です。試験官がいることで、監視だけでなく、オンライン入試に慣れていない受験生に対してサポートすることも可能になります。

事前に「不正をしない」という内容をまとめた誓約書を提出してもらうことも、不正防止に役立ちます。「誓約した=バレたら罰せられる」ということですので、学生としても不正行為を行うリスクの大きさを、改めて感じやすくなるでしょう。

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オンライン入試を実施する上では大学がすべきことは

オンライン入試には、従来の入試には見られなかったリスクや注意点があることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。最後にオンライン入試を実施する上で、大学側として準備すべきことをまとめます。

オンライン入試のガイドラインを作る

オンラインによる講義やオープンキャンパスが浸透する中、現時点ではまだオンライン入試に関する国のガイドラインなどは作られていないのが実情です。よって、ガイドラインは各大学で独自に作成する必要があります。

ガイドラインを作成すれば、入試広報でもあらかじめ情報発信を行うことが可能です。早めの情報発信は、その大学を志願する学生に安心感を与えることにもつながるでしょう。よって、ガイドライン作成には1日も早く取り掛かることをおすすめします。

また、オンライン入試を開催するにあたり、不正行為の防止策として自宅での受験を控えることを念頭に置くと良いでしょう。

その代わり、オンライン入試ができる会場をいくつか用意します。安定した通信環境を確保しやすく、同じスペックを持ったPCを用意できるため、公平性も保たれるでしょう。また、試験監督の配置も可能となるため、従来の入試と同じように不正が起きにくい環境を作ることができます。

ガイドラインで取り入れたい項目

最後に、ガイドラインに含めるべき項目をまとめます。最低限以下の項目を抑えておけば、オンライン入試の前準備から実施まで滞りなく進めることができるでしょう。

・推奨するブラウザ
企業やお店などのWebサイトでも、ブラウザにより動作や表示が変わることは珍しくありません。全ての受験生に同じ表示で入試を受けてもらうためにも、推奨するブラウザは指定すると良いでしょう。

・動作確認テストのやり方
こちらは大学側のマニュアルとして用意しておくことで、入試担当者が変わっても対応できるよう準備しておくものです。

・オンライン入試の進め方
受験生向けに必ず用意しておきましょう。ログインの仕方から試験の始め方、解答欄の埋め方などを順序立てて案内しておきます。

・エラーが出た際の対処法
焦って誤った操作をすることで解答欄が白紙になってしまうといった事態は、必ず避けなければなりません。上記の「オンライン入試の進め方」と同様、画面キャプチャとともに案内してあると、実際の入試中に迷いにくくなり親切です。

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まとめ

新型感染症の流行により突如休校の判断をせざるを得なかったところも多く、ただでさえ予期せぬ事態に直面している大学の現場。この状況でオンライン入試の準備まで重なると、現場の負担はさらに大きくなってしまうことでしょう。

かといって忙しいからと後回しにしているうちに、入試シーズンはあっという間に近づいてきます。

受験生の努力を無駄にしないためにも、大学としてできることを考えていきながら、新しい入試の形を模索していきましょう。