大学の志願者を確保するには?入試広報で重視すべき考え方

18歳人口の減少や大学数の増加などにより、私立大学ではおよそ4割が定員割れをおこしています。今後ますます18歳人口が減少していく中、志願者を確保するためには、入試広報における戦略を変えていかなければなりません。 この記事では、大学の志願者確保の現状や課題、そして志願者を確保するために重視すべき考え方を解説します。 有効な広報戦略を立て、安定した志願者数を確保したい入試広報担当者の方は、ぜひ最後まで読んでください。


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志願者の確保はますます難航していく?!

旺文社 教育情報センターの調査によると、559校ある私立大学のうち、221校が定員割れを起こしているという結果がでました。

この数字は、学生数が財政状況と直結している私立大学にとって非常に深刻な問題です。
志願者が減少すれば受験料は少なくなり、入学者が減少すれば入学金や授業料が少なくなります。

私立大学は財政状況の悪化を防ぐためにも、安定した志願者の確保に努めなければならないのです。

しかし、私立大学全体の入学定員充足率を見てみると、109%と高い数字を維持しています。これは、定員充足率の高い大学と低い大学の二極化が進んでいることをあらわしており、人気のある大学に学生が集中している状況がわかります。

出典:19年度私立大・短大入学状況(旺文社 教育情報センター)

このように、志願者数が私立大学の中で大きな偏りが生まれている背景には、どのような要因があるのでしょうか。

私立大学は人気大学への集中傾向にある

2019年度の私立大学入学者数は、49万8,425人。そのうち大都市圏の入学者数は39万2,501人と、全体の78.7%を占めています。

東京都だけでも13万8,385人と、全体の27.8%を占めており、都市部にある大学への高い人気がうかがえます。

出典:大学 都道府県別入学者数(令和元年度)(ナレッジステーション)

都市部の大学に人気が集まる要因は様々ですが、首都圏や東京への憧れが多少なりとも影響していると考えられています。なぜなら、大学進学者の地元残留率の低い県が地方に集中しているからです。

18歳人口の減少が高く、地元残留率が低い県にある私立大学は、地元内で志願者を募集するだけでは安定した志願者の確保は困難であるといえるでしょう。

近年は公立大の人気も顕著になっている

また、近年は地方自治体が運営する公立大の人気も顕著にあらわれるようになりました。

学費が国立並みであることから、経済的な理由で私立大学に進学できない学生が公立大を選択しており、中には運営する自治体に住む学生の学費を割引する大学もあるようです。

また、私立大学の定員厳正化の影響により、私立の難関大をさけて自分の実力に合った公立大を受験する学生も増えています。

さらに、地域密着型の教育環境は地元での就職に有利であるといわれており、地元志向の学生に選ばれる大きな要因となっているのです。

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好事例を出している大学の広報戦略とは?

志願者の確保が年々厳しさを増している中、順調に志願者を増やしている大学もあります。安定した志願者の確保に成功している大学は、どのような広報戦略で志願者を増やし続けているのでしょうか。

好事例を出している大学が行っている広報戦略を3つご紹介します。

1つめの戦略は、キャッチコピーです。学生の注目を集めている大学は、印象的なキャッチコピーで大学の魅力をアピールし、学生の心をつかんでいます。

2つめの戦略は、積極的なデジタルの活用です。大学のサイトに授業風景や在学生のインタビュー記事を載せたり、広告動画を配信したりするなど、コンテンツの内容でほかの大学との違いをアピールしています。

また、より多くの学生の目にとまるように、LINEやツイッターなど志願者のニーズに即した媒体での発信を強化したり、SNSのチャット機能を利用して大学に興味を持ってくれた学生とコミュニケーションを図ったりしています。

3つめの戦略は、ターゲットの絞り込みです。自分たちの大学が求めている学生像を明確にし、ターゲット層の学生に志願してもらえるように広報活動を行っています。

ターゲットとなる学生像をより具体的に設定することで、キャッチコピーやデジタルを活用した配信がより効果的に作用するでしょう。

志願者候補である現代の高校生は、一部の情報だけを信用して出願を判断しません。資料請求はもちろんのこと、大学のサイトやネット上の口コミなど、様々な媒体で情報収集を行い、自分に合った大学かどうかを見極めています。

つまり、せっかく大学に興味を持ってもらえたとしても、資料請求以外に大学の情報を得られる手段がなければ、次の行動に移ってもらえなくなってしまうのです。

大学側はこれまでの広報活動だけでなく、新たな広報戦略の実施を求められているといえるでしょう。

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志願者確保の競争に勝ち残るためには「量より質」を重視する

この先、志願者確保の競争はさらに激しくなると予想されていますが、この競争に勝ち残るためには、「量より質」を重視する考え方にシフトしなければなりません。

なぜなら、大学のターゲット層ではない学生にアプローチをかけても、志望意欲を高めてもらえず、出願につながらないからです。

では、志願者確保における「質」とは、何を指すのでしょうか。

質の高い学生とは、大学への関心・志望度が高い学生のことです。
具体的には、以下のような行動を取ってくれる学生を質の高い学生と考えます。

・情報収集に積極的である
・情報への感度が高い
・情報提供をしてくれる

ひとつずつ順番に解説していきます。

情報収集に積極的である

大学に興味を持っている学生は、定期的にその大学のサイトを訪れ、情報を取得しています。学部や学科、大学の特色についての理解を深めていくことで、より志望度が上がっていくでしょう。

大学に対する志望度が高い学生は、大学がLINEやメールで配信する情報に高い反応を示してくれます。なぜなら、大学の最新情報をチェックしたいと考えているからです。

SNSをフォローしてくれている学生の中には、いろいろな大学の情報を集めたいと考えている学生も多いです。しかし、大学への関心が高まると、SNSから大学のサイトにアクセスしてくれたり、LINEの友達登録をしてくれたりなど、次のステップに進んでくれるようになります。

情報への感度が高い

大学に興味が無い学生は、その大学が発信する情報に関心がありません。大学から発信する情報への反応が高いということは、大学に関心を持っていると考えられます。

オープンキャンパスや大学が開催するイベントに参加してくれている学生も、大学への志望度をより高められる可能性がありますので、積極的にアプローチしていきましょう。

情報提供をしてくれる

入試広報のデジタル化のメリットは、学生と大学がコミュニケーションをとれるようになったことです。これまでの入試広報は資料請求を送付することがほとんどで、学生がどの程度大学に興味をもっていて、どのような情報を求めているかを知ることはできませんでした。

しかし、SNSのチャット機能を利用して学生とやり取りができるようになったことで、学生が何を求めているのか知れるようになったのです。

学生の求める情報を知ることは、入試広報でのギャップを埋められるチャンスであり、新たな志願者の確保にもつながります。

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まとめ

私立大学の志願者は首都圏の人気大学に集中する傾向があり、今後もこの流れは加速するとみられています。また、学費などの経済的な理由や私立大学の定員数厳正化の影響により、公立大学の人気も見逃せません。

大学が志願者を確保するためには、学生の質を重視した入試広報を行う必要があります。ぜひ質の高い反応を示してくれる学生を見つけ、志願者の確保競争を勝ち抜いていきましょう。