入試のオンライン化の可能性と懸念点について

新型感染症の影響により、感染拡大の防止に配慮した入試の開催が求められています。また、長期間の休校や様々な活動の自粛により、調査書などに実績を書けない高校生に配慮した評価基準を設定する必要もあるでしょう。 この記事では、オンラインによる入試の可能性と懸念点について、その対応策も交えながら解説してきます。


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入試のオンライン化の現状・課題

文部科学省は2020年6月19日、それぞれの大学に新型感染症の防止に配慮した入試の実施を文書で求めました。

誰もが予想しなかった新型感染症の拡大を受け、入試のオンライン化はどのように進められていくのでしょうか。

入試のオンライン化の現状

入試のオンライン化に関する取り組みは、それぞれの大学ではじまったばかりです。まずは、総合型選抜と指定校推薦において、オンラインによる実施を検討しています。

しかし、これまで実施してきた試験内容をそのままオンラインで実施するのは困難であり、様々な課題を解説しなければなりません。

感染防止のためにも、面接はすべてオンラインで実施したいと考えている大学は多く、環境の整備が急がれています。

そして、受験を希望するすべての学生が、混乱することなく試験を受けられるように、アプリインストールなど特別なシステムを使用する環境にすることなく、試験が受けられる仕組み作りを目指しています。

そのほかにも、面接などを実施する際、セキュリティの観点から使い捨てのリンクなどを利用して、閉じた空間にアクセスをして試験を行いたいと考えている大学もあるようです。

オンライン化するにあたっての課題

面接以外の試験をオンラインで実施するにあたり、プレゼンや小論文をどのように対応するかが大きな課題となっています。

プレゼンひとつをとっても、紙を使用したプレゼンもありますし、パワーポイントのスキルが学生によって異なるため、適正な評価ができない恐れがあるのです。

入試までに時間がない現状では、オンラインとオフライン両方での実施も視野にいれた対策が求められています。

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入試のオンライン化で懸念される点とその対策

オンライン上で入試を実施する際、回線トラブルやセキュリティなど様々な懸念点があります。これらの懸念される問題点を解決するために、どのような対策を行えばいいのでしょうか。

デジタル環境の整備

オンライン上で入試を実施するにあたり、最も懸念される点は、デジタル環境の整備でしょう。大学側のデジタル環境の整備はもちろんのこと、学生側の通信環境にも配慮しなければなりません。

なぜなら、試験を実施する際、短い時間の中で大量のデータをアップロードしたりダウンロードしたりしなければならないからです。

たとえば、プレゼン資料をアップロードする、プレゼン資料を画面に表示させる、試験問題をダウンロードして回答をアップするなど、一連の流れをスムーズに行うためには安定したデジタル環境が必要です。

面接を実施する際も、動画でやり取りするため、不安定なデジタル環境では、パソコンやスマートフォンの画面が固まってしまう恐れがあります。

学生のデジタル環境が十分でない場合、ノートパソコンやWi-Fiルーターを貸し出すなどのサポートが必要です。学生が安心して試験を受けられるように、大学側のインフラ環境を充実させましょう。

現在の高校生はスマホでインターネットを利用するケースが多く、パソコンを持っていない人も多いのが現状です。試験のためにパソコンを用意してもらうのは大変ですし、大学側が貸せる台数にも限りがあります。

試験方法に適応できない学生が受験をあきらめないように、入試をスマホでも受けられるように対応することも、志願者を減らさないために有効な方法です。

また、大切な個人情報を大量に扱うため、セキュリティ対策をおろそかにしてはいけません。万が一トラブルが大きくなると大学のイメージにも影響が出てしまう恐れがあるため、リスク管理は十分な対策をとるようにしましょう。

待ち時間の対応

オンラインでは、共通のリンクを使用するため、次に誰が入ってくるかが判別しにくい場合があります。Zoomで学生ごとに個別のURLを送るにしても、受験者数が多いため、対応は困難でしょう。

個別のURLが難しい場合は、学部ごとに個別ルームを設置するとスムーズに試験を進められます。個別ルームの中のチャット機能を利用すれば、次に誰が入ってくるかの管理もしやすいでしょう。

また、同じ日に試験を実施する場合、学生の待ち時間が1~2時間となってしまう場合もあります。あらかじめスケジュールを渡しておくか、日程をずらすなどの配慮も忘れないようにしてください。

評価方法

新型感染症の拡大により、長期に渡る休校や、様々な外部活動の自粛、検定試験の中止などで、学生生活の実績や成績が調査書に記入できない受験生が多く存在します。

そのため、実績が記入できない受験生が不利に評価されないために従来の入試とは異なる基準を設けなければなりません。

新しい評価基準を設定する際は、内申書だけでなく、大学入学後のビジョンも視野に入れた多面的で総合的な評価基準を設ける必要があるでしょう。

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入試のオンライン化に秘められた可能性

オンラインによる入試を実施するために、大学側は様々な対応策をとらなければなりませんが、入試のオンライン化は大きな可能性が秘められています。

入試のオンライン化に秘められた可能性を3つご紹介しましょう。

時間の制約に縛られない

ひとつめの可能性は、時間の制約に縛られない点です。

オンラインによる入試の実施は、試験会場がないため、開催日時をこれまでよりも柔軟に設定できます。試験会場を設営する手間もなくなるため、業務上の負担も軽減します。

学生は事前に録画した動画やレポートを提出する場合、自分の好きなタイミングで取り組めるようになるため、これまで受験を諦めていた学生からも志願してもらえる可能性が高くなるでしょう。

さらに学生は、試験会場に向かう手間がなくなるため、移動時間をカットできます。時間の制約が大幅に減少するため、他大学との日程調整やスケジュール管理が容易になるでしょう。

遠方からの学生も呼び寄せる

学生にとって遠方の大学を受験するためには、移動時間だけでなく、交通費や滞在費用など、様々な費用がかかり、興味のある大学があっても受験できないケースが多くありました。

しかし、入試のオンライン化によって受験のハードルが下がり、より多くの大学を受験できるようになります。

大学は県外の学生を確保しやすくなり、より安定した経営状態を目指せるでしょう。

入試の様子を録画できる

入試のオンライン化による可能性はそれだけではありません。デジタルの機能を生かして、入試の内容をブラッシュアップできるのです。

オンラインによる試験の実施は、録画機能を使って後から見直すことができます。そのため、入試内容の問題点に気づきやすく、次の入試に反映できるのです。

学生を評価する際も、あらかじめ録画したものを審査できるため、面接官の主観に偏りすぎない客観的な評価を行えます。

録画したデータは複数人で共有できるので、今後の入試に生かしやすく、面接官同士での振り返りにも役立つでしょう。

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まとめ

入試をオンライン化させるためには、デジタル環境の整備や受験生がスムーズに入試を受けられる体制を整える必要があります。

入試をオンライン化することにより、新型感染症の感染拡大予防につながるほか、遠方の学生が移動時間や交通費用を気にすることなく入試を受けられるようになるでしょう。

ぜひ入試のオンライン化を検討し、より多くの志願者を集められるよう対策してください。