大学の入試広報活動をWebに移行するべき理由

この記事では、大学入試広報でWebを活用するメリットと、Webを効果的に活用するポイントを解説したいと思います。


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スタディプラス デジタルマーケティング推進担当の亀井です。


大学入試広報になぜWeb・デジタルマーケティングを活用するのか?
みなさんは、この質問にどのように答えますか?

時代の流れ、学生がネットをよく使っているから・・・
コストを抑えられるから・・・
ターゲティングでき効果測定が容易だから・・・

ちょっとこれでは結論を急ぎ過ぎで乱暴すぎます。

私はこの質問に答えるためには、インターネットの特性を改めて理解する必要があると感じています。

<ネットの3つの特性と利点>

  1. 場所と時間の制約が少ない
  2. 自動化と独自の表現手法
  3. 情報発信と取得の双方向性

原点に立ち戻ったチェックポイントとして、まずこれらを最大限活用できているでしょうか?


最大限活用した結果として「十分に狙いすました情報発信や収集」「納得のいくコスト削減」や「有益な学生とのコミュニケーション」が可能となります。この理解なく結果だけを追い求めても、目先の施策実施となりうまく最適化することができず、継続的施策実施は難しくなると思います。

少子高齢化の影響により、多くの大学で志願者確保に苦慮されているようです。さらに、情報発信ツールの多様化で、既存の広報活動に限界を感じている広報担当者の方もいるのではないでしょうか。

これからの大学入試広報はデジタルマーケティングを正しく理解して活用しなければ、デジタルネイティブ世代の高校生に大学の魅力を伝えることは難しくなるかもしれません。

大学入試広報でWebを活用する3つのメリット

大学入試広報でWebを活用するメリットは、以下の3つです。

1.広報活動に関わるコストを削減できる
2.継続的コミュニケーションで志願者をつなぎとめることができる
3.施策結果を数字でみながら次の施策改善ができる

ひとつずつ詳しくご説明します。

1.広報活動に関わるコストを削減できる

ここはよく勘違いされる点ですが、単純にWeb広告やWeb制作コストが他に比べて安いからではありません。これは初期もしくは毎月かかるコストを継続的に得られる効果として回収しやすい構造であるからです。

大学入試広報は、学生が志望校の情報収集を行い始める6月〜推薦入試がひと区切りとなる12月くらいまでの約半年で新規志願者を発見獲得しながら施策を打ち続ける、『積み上げ型の連続施策マーケティング』です。
結果的にコスト削減につなげるためには、一度つながった志願者をできるだけ取りこぼさず(かけたコストを無駄にせず)、継続して志望意欲を高めていく作業と努力が必要です。

この際、全体にかかるコストと継続施策で得られる効果とのバランスが重要ですが、特に意識すべきポイントは、費用をかけずに効果を得る部分も含めて考えることです。

<費用をかけずに効果を得られる具体的な例>
1:LINEやtwitterアカウントの告知、フォロー促進
・説明会や相談会でのウェブ施策の紹介とアカウント登録メリット説明
・発行する印刷物へのSNSアカウントの告知(QRコード配布)
・学内関係者内での認知度や関係者のウェブ施策拡散意識の定着(学内関係者への説明会開催)
2:メディアパブ、メディアリレーションの活用
・新しいWebを活用した取り組みのニュースリリース配信
・ネットメディアでの無料掲載
3:取り引きパートナーからの告知
・教育系イベントやセミナー登壇での発表、取り引きパートナーからのニュースリリース配信など

こうして全体で捉えて削減できた分は、さらなるWeb広報の費用に回せるため効率的な広報活動を行えるようになります。

2.継続的コミュニケーションで志願者をつなぎとめることができる

これまでの広報活動は、例えば資料請求の送付では一度請求者に一度送付して終了など、アプローチが一方通行で単発施策で終わっていました。その後は志願者からの反応を待つだけの状態が多くなり、学生と継続的なコミュニケーションを取ることができません。ここでもよく勘違いされる点が、この際の「コミュニケーション」というのは、同じ時間に会話するというイメージのようなものではなく、ウェブサイトの行動履歴の収集やLINEなどで双方向に情報の発信と収集が行われるという意味です。必ずしも会話的なコミュニケーションが発生しなくても、大学側が学生から興味関心や個人情報など情報を収集できることで十分メリットを得られている状況となります。

特に夏前までに学生とウェブ上でやり取りを始めることで、志望意欲の低い学生に対しても継続的なアプローチが可能になります。その後、LINEチャットボットやオンライン相談、ウェブオープンキャンパスなどを利用して、段階的に志望意欲を育てていくことが可能になります。

3.施策結果を数字でみながら次の施策改善ができる

Webを活用した広報活動では、反応があった志願者の傾向や需要、志願者が抱えている問題点など多角的なデータを収集・分析ができます。

分析したデータを元に次の広報活動を行えば、ターゲット層に響くアプローチができるようになり、志願者となりうる根本母数を増やすことができるようになるでしょう。

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Webを活用した大学入試広報の一例

これからの大学入試広報には、Webを使った広報活動がかかせません。しかし、どのような方法を用いてWebを活用するといいのでしょうか。Webを活用した大学入試広報の一例をご紹介します。

Webの基盤

Webの基盤とは、大学が運営するサイトのことです。大学本体サイトだけでなく受験生向けサイト、オープンキャンパスサイト、ブログなどいわゆる「オウンドメディア」と呼ばれるすべてのものを指します。

このオウンドメディア・サイト運営で最も重要なのは発信する情報の内容と配置です。お店でいうと品揃えと同じようなイメージです。
例えばお店では高いものから安いものまであり、興味関心をもつ最初のきっかけとなる「入り口商品」から、メイン・主役となる中間価格帯の「リピート商品」、常連客や上位顧客が購入する「高品質な上位商品」まで売上をバランス良く構成できるよう網羅的に商品が取り揃えられています。
このようにウェブサイトの情報を以下の3つで構成し網羅性を保持しつつも情報の量と質でメリハリをつけるべきです。

1:初期認知層に届ける興味関心を引きやすいカジュアル情報
2:比較検討層に届ける更新性の高いメイン情報
3:志望意欲の高い学生層に届けるスペシャル情報

Web独自のコンテンツ

Web独自のコンテンツは様々ですが、現状でいうとやはり動画だと思います。動画コンテンツは、文章だけのコンテンツよりも多くの情報をわかりやすく学生に伝えられます。
学部の特徴をわかりすく伝えたり、実際のオープンキャンパス・相談会風景や在学生の様子を動画で公開することで、大学のリアルな雰囲気を感じ取ってもらうことも可能となります。

特に最近のトレンドとしては1分以内の短尺動画を活用されていることが多く、現代の若者の情報取得特性にあわせた動画制作となっています。また同じテーマや伝えたい内容でも短尺(1分以内)と長尺(5分前後)の2種類を作成して役割に変化をもたせることも多くなっています。

情報伝達ツール

ウェブサイトで情報発信がされている、または新しい情報が追加されたことが志願者のみなさんに気づかれないのであれば意味がなくなってしまいます。せっかく作成したコンテンツ(情報)をできるだけたくさんの志願者にふれていたくためには、情報を発信し始めたことや更新されたことをメール、LINE、twitter、Youtubeなどの機能をつかってうまくサイトに来訪してもらうことが重要です。複数のツールを活用して情報到達度をたかめていく必要があります。
そのために、施策によってどれくらいの学生に情報をとどけられたのかを確認するため「接触者数」を中間指標として持つこともおすすめします。

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Webを活用した大学入試広報をするときのポイント

Webを活用した具体的な方法をご紹介しましたが、ただWebを使用しただけでは、目標とする成果を達成できない可能性があります。

効果的にWebを活用するためには、どのようなポイントに気をつけたらいいのでしょうか。

デジタルマーケティングカレンダーの作成

まずは、年間を通してのデジタルマーケティングカレンダーを作成しましょう。
大学のマーケティングでは1年を通してある程度スケジュールパターンが決まっていると思います。その流れにあわせて、事前にマーケティングカレンダーを作成します。初期にざっくりとした1年分を作成し、可能であれば直近詳細版3ヶ月分の作成を行い、1ヶ月半経過した時点で次の詳細3ヶ月分のカレンダーを作成するとスムーズに運用がながれていくと思います。理想は以下のような項目が時系列で一覧になっていれば良いと思いますがそれぞれの大学の事情にあわせ追加削除して作成いただければと思います。これを部署や部署外も含め関係者と事前に共有し認識あわせを行っておきます。

<デジタルマーケティングカレンダー例>
1:年間大学基本的な予定
2:オフライン・オンラインイベント
3:デジタルマーケティング実施策
4:ねらうべきターゲット(想定される志望意欲)
5:競合校予定
6:必要なデジタルインフラやツール

目標と中間指標の設定

必ず必要なのは、向かうべき目標とそれを達成するための各施策、施策にはその効果の良し悪しを判断する指標です。
目標は各大学で普通に設定されると思いますが、設定が難しかったり、ばらつきがあるのは中間指標だと思いますので、その例をここでお話したいと思います。

まず、デジタルマーケティング施策指標には以下の3つが必須分類が存在します。この3つの掛け合わせが成果の判定材料・改善ポイントとなります。
A:接触母数
B:情報発信数
C:行動率

■A:接触母数
Web上でどれくらいの志願者に接触できたかという定量指標です。
<指標例>
・大学サイトページビュー数、ユニークユーザー数
・LINE公式アカウント友だち数
・メールマガジン登録者数

■B:情報発信数
接触母数の志願者にどれくらいの回数を発信したかという定量指標です。
<指標例>
・LINEメッセージ配信数
・メール配信数
・動画本数

■C:行動率
接触母数の志願者に情報を配信してどれだけ反応したかという定量指標です。
<指標例>
資料請求者のLINE友だち登録率
LINE友だち登録者のオープンキャンパス参加率
LINE友だち登録者の出願率

質と量を定量で数値化しそれを日々追っていくことで各施策の成果判断を行うようにします。これらを予め決めておき、関係者の中でも認識あわせを行っておくことも重要です。

志望意欲に合わせた情報発信の工夫

Webを使った告知の場合、よくターゲットにあわせた情報発信を、といいますが、大学入試広報の場合は、ターゲットはある程度絞られているため「志望意欲に合わせた情報発信」が重要になります。そのためには、志望意欲自体を把握する方法を確立する必要があります。

志望意欲はどうすれば効率的に判別することができるでしょうか?

その答えは、以下のようなウェブサイトやメール・LINEの行動履歴にあります。
1:どこからやってきたか
2:どのページを見たか
3:特定のページを何回見たか
4:メールのどの部分に反応したか(リンククリック)
5:LINEのどの部分に反応したか

これらの行動履歴(情報に接触した回数と反応した情報の内容)1つ1つに点数をつけ、それを人によって集計合算し志望意欲を判定します。点数が高ければ志望意欲が高いといった具合です。
その志望意欲をある程度のレベルにわけ、レベルごとに適切な情報のお知らせをメールやLINEで送付していくことで志願者を出願まで“育てていく”ことが可能になります。その効果把握は1つ前でお話した指標とゴールで見極め、常に施策改善していくことが求められます。

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大学の入試広報活動をWebに移行するべき理由
スタディプラス亀井からの5つの提言

1:改めてインターネットの特性、Web活用のメリットを理解する
2:ウェブコンテンツの品揃え(網羅性)を意識する
3:新情報に気づいてもらえる仕組みを用意しておく
4:デジタルマーケティングカレンダーと中間指標を共有し認識あわせを行っておく
5:志望意欲に合わせた情報発信を行う

大学入試広報のトレンドは、社会の変化に合わせて変わっていきます。継続して志願者を確保するためには、さまざまな広報手段を取り入れてみることが大切です。

Webによる広報活動を成功させるためには、志願者が求めていることを理解したうえで情報発信することが重要です。

ひとつのやり方にこだわらず、新しい広報手段を取り入れながらそれぞれの大学に合った入試広報のスタイルを確立していきましょう。