大学入試広報担当者の現状
デジタル人材について詳しく解説する前に、大学入試広報担当者の現状を解説します。なぜ大学入試広報でデジタル人材が求められているか、改めて確認しておきましょう。
時代に合った広報活動をしていない
現在多くの大学では、残念ながら時代に合った広報活動ができていません。いまだ紙による資料請求が広報活動のメインである大学も多いのではないでしょうか。
インターネットの普及が進み、高校生の91.9%がスマートフォンを利用し、8割以上が1日に長時間、動画を視聴しています。
出典:「令和元年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」(内閣府)
多くの高校生がLINEやYouTubeなどのSNSを日常的に利用している中、デジタルを活用した入試広報活動は非常に高い効果が認められています。
しかし、情報発信する側の入試広報担当者がデジタルに苦手意識がある場合、ネットの利点を活かした広報活動を行うことができません。
そのため、大学入試広報によって志願者を確保できているのか把握できず、自分たちが行っている施策に効果があるのかわからないと悩んでいる広報担当者の方も多いのではないでしょうか。
マーケティングとして捉えられていない
現状の大学入試広報は、「志願者を確保する」という目的に焦点を当ててしまうがために、「どのような受験生をターゲットに、どんな施策で志願者を獲得すべきか」という過程を疎かにしてしまっている傾向にあります。
本来であれば大学入試広報も、企業がターゲットに向けて自社の商品やサービスを宣伝して顧客を獲得していくのと同じように、マーケティング感覚を持って、大学の魅力や強みを情報発信しながら志願者を獲得していくことが求められます。
顧客を獲得するためのマーティングの手法は、大学入試広報でも活用することが可能です。ターゲットとなる受験生はいわば「顧客」であり、志願者の獲得は「顧客の獲得」に置き換えることができるため、うまく応用すれば志願者を確保するまでのプロセスを効率化させることにもつながります。
しかし、大学入試広報の活動をマーケティングとして捉えられていない場合、受験生がどのような情報を求めているかを把握せずに広報活動を行ってしまっているため、大学側の一方的な情報発信に偏ってしまいます。
大学側から発信している情報が、本当に受験生が求めているものなのかを精査しない限り、大学側と受験生の間でギャップが生じてしまうことになるでしょう。
これらを解決するには、デジタルツールを積極的に活用し、受験生の興味や関心、求めている情報を分析することが必要になります。
これからの入試広報担当者に求められる「デジタル人材」とは
入試広報担当者の現状をあらためて確認すると、デジタル人材の必要性が理解できたのではないでしょうか。
ここでは、これからの入試広報担当者に求められている「デジタル人材」について解説していきましょう。
教育サービスを提供する感覚を持つ人
大学入試広報におけるデジタル人材は、ターゲットとなる受験生に対してどのようなサービスを提供すべきか理解していることが求められます。
今まで行ってきた大学入試広報の活動が、今後も通じていくとは限りません。情報発信の技術が進化していくなかで、受験生自身が情報を得る手段が多種多様になってきているため、常に時代のトレンド追っていく必要があります。
そのため、デジタル人材はそのときどきの受験市場を踏まえていきながら、自分たちの大学のポジションを把握していかなければいけません。また、競合となる大学と比較し、どの点が大学の強みとして発信できるのかを認識しておくことも重要です。
大学のポジションを理解することで、どのような受験生が志願者候補となるのかが明確にわかるでしょう。また、受験生に向けて適切な情報を発信することが可能になり、受験生からの反応率を見て試行錯誤を繰り返しながら、効率よく入試広報活動を進めることができるようになります。
デジタルマーケティングの利点を理解している人
デジタルマーケティングの長所を理解しているデジタル人材は、より効果的な施策を生み出すことができます。
先述したとおり、大学入試広報の活動はマーケティング手法を活用することが可能です。なぜなら、マーケティング活動で顧客を獲得するまでのプロセスが、入試広報活動で志願者を獲得するまでのプロセスに置き換えられるからです。
マーケティングでは顧客を獲得するにあたり、顧客の興味や関心、どのセグメントに属しているのかをデータによって分析します。
分析したデータを元に、それぞれの顧客に対して効果的なアプローチを考える行動は、受験生の志望意欲に応じたアプローチを行う入試広報と同じであるといえるでしょう。
受験生の志望意欲を見極め、どのタイミングで適切な情報を与えるべきか客観的に判断できる人材が、これからの入試広報担当者に求められています。
適切なタイミングでデジタル知識を業務に活かせる人
入試広報担当者に求められているデジタル人材は、適切なタイミングでデジタルを活用し、入試広報の効果を測れる人です。
デジタルを利用して得られるデータを活用し、効率よく情報発信することで、業務を効率化することができます。たとえば、受験生が多く使っているSNSに広告を出し、大学が求めているターゲット層にダイレクトにPRすれば、効率よくできるでしょう。
また、実施した施策の効果を測ることで、施策にどれくらい効果があったのかがわかります。効果がなかった施策の問題点も見つかりやすく、その都度修正しながら施策を実行できます。
つまり、デジタルスキルを活かしてPDCAを回して入試広報を行えるようになれば、自分たちが実施している施策の効果を実感できるようになるということです。
大学入試広報担当者がデジタル人材になるためには?
入試広報担当者に求められるデジタル人材は、マーケティング感覚を持ち、適切な場面でデジタルスキルを駆使して成果を出すための行動を取れる人材であることがわかりました。
では、入試広報担当者がデジタル人材になるためには、どのような方法があるのでしょうか。
デジタルの活用を前提とした目標設定をする
入試広報担当者がデジタル人材になるためには、デジタルの活用を前提とした目標を設定する必要があります。
たとえば、オープンキャンパスへの申し込み者数を前年の120%にしたいと目標を立てるとしましょう。
この数字を達成するためには、どのようなツールを使えばいいかを考えます。メールマガジンでのアプローチが効果的だと判断したら、どのタイミングで受験生にメールマガジンを届けるとよいかなど、さまざまな施策を考えられるようになるでしょう。
目標を達成するためにできることを逆算して考えられるようになると、どのようなツールを使い、どんなデータが必要なのかが見えてきます。
実務でデジタルツールを活用する
目標を立て、施策を計画したら、実際にデジタルツールを使っていきましょう。デジタルツールにはさまざまな種類があり、施策によって使い分ける必要があります。
Webサイトやバナー広告でどれだけ効果が出ているかを測れるツールを活用すると便利です。そのほかにも、サイトのアクセス状況を分析できるアクセス解析ツールや、受験生がどのようなキーワードで検索しているのかがわかる分析ツールがおすすめです。
最初のうちはツールの操作方法やデータの見方がわからず、使いこなせるようになるか心配になりますが、どちらも少しずつ慣れていくでしょう。
施策の効果を数値で把握できるようになると、今まで見えてこなかった問題点が見つかる可能性もあります。問題点を修正しながら施策をすすめていけるので、より効率的に入試広報が行えるようになるでしょう。
まとめ
入試広報担当者に求められているデジタル人材についてご説明しました。受験生は1年サイクルで対象者が変わるため、入試広報担当者は短い時間の中で成果をあげなければなりません。
そのため、時代の変化に合わせた広報活動を行うためには、現状を正しく理解してから広報活動を行う必要があります。
ぜひ今回の記事を参考にして、自分たちの大学の広報活動について振り返ってみてください。