志願者を確保できる大学が行っている取り組み
大学のブランディングとは、この大学にしかないと思わせる魅力や特別感、強みです。定員割れに悩む大学がある一方、志願者をしっかりと確保できている大学の多くはブランディングに成功しています。
この項目では、どのようなブランディングへの取り組みが行われているのか、「具体的な内容」と「広報の仕方」2つの視点でご紹介します。
学生生活の充実度をアピール
充実した学生生活を送りたいと誰もが思うものです。大学側は具体的に学生生活の充実度や魅力をアピールすることで、入学するメリットを伝えられます。
学生生活の充実度ひいては大学の魅力をアピールするときのポイントは、以下の2点です。
・学生の課外活動を重点的にピックアップ
・大学としては珍しい施設をアピール
大学のホームページでは各学部の紹介ページを設けているところが大半ですが、充実度で見ると情報不足が目立つ大学が少なくありません。たとえば経済系の学部を見ても経済学部や商学部、経営学部と複数の類似学部があり、人間学部など名称のみではカリキュラムが想像しにくい学部も存在します。
基本のカリキュラムに加え、学部の特徴的な課外活動などについて詳しく紹介してみましょう。ほかの大学では経験できない課外活動があれば、差別化はもちろん、明確な目標を持った学生の獲得にもつながります。
また、施設面も同様です。実在する例では学内に天文台やオペラホール、音響製作スタジオのある大学などがあり、それぞれ異なる魅力を持っています。
ソフトウェア(カリキュラムなど)とハードウェア(施設)の両方で大学の魅力を発信し、充実した学生生活を想像してもらうことを目指しましょう。
在学生の入試広報への参加
人気を得ている大学の中には、在学生による「リアルな声」の発信に重点を置いているところもあります。実際に在籍している先輩の声を参考にすることで、詳細に学生生活を想像できるうえ、大学そのものへ親近感を持ってもらえる点がメリットです。
在学生の協力による入試広報は、以下の例が挙げられます。
・在学生の視点でまとめた大学の魅力
・在学生によるブログやSNSでの発信
・説明会やオープンキャンパスの運営参加
たとえば、大学のホームページとは別に受験生へ向けた応援サイトを開設し、彼らが本当に知りたがっている情報を配信するという方法があります。前述した課外授業などを学部ごと、カリキュラムごとに魅力を紹介したり、施設の特徴を解説したりすることで、より大学への理解を深めていくことにもつながります。
また、オープンキャンパスなどのイベント時には大学の職員だけではなく、在学生も巻き込んでいくのも良いでしょう。これら在学生の広報への参加は受験生が共感しやすい大学の魅力を伝えられるため、積極的に取り入れたい方法です。
学生から選ばれている大学はどのような傾向を持っている?
学生は親しみやすく頼りになる大学を求めています。研究施設やカリキュラムの充実など勉学面はもちろん、普段の学生生活を安心して送れるようなサポート体制も重要です。
特に情報の消費速度が速い近年の環境に慣れている学生には、以下のような特徴を持つ大学ほど選ばれやすくなっています。
新しい仕組みを取り入れている
常に新しい仕組みや取り組みを試行する大学は、チャレンジ精神や柔軟性がうかがえることから、受験生など若年層に好ましく思われます。カリキュラムの改革のみならず、大学の広報活動においても新しい仕組みを取り入れることは難しくありません。
従来は資料請求でしか大学の詳しい情報を知ることができませんでしたが、昨今はデジタルツールを用いて広報活動を行うことで、より鮮度のある情報を学生に向けて発信していることが多くなっています。
動画投稿サイトの生放送機能やSNSの個別メッセージ機能などを活用し、こまめに情報発信を行ってみましょう。たとえば日本人にとって身近なメッセージアプリ「LINE」は、全体に同様の内容を配信できる機能のほか、ユーザーの動向に合わせてAIが自動で返答を行う機能があります。
志望意欲ごとに異なる情報を発信することで、たとえば「第一志望者」と「検討者」それぞれのマインド状態に合わせたアプローチが可能です。
また、オープンキャンパスなどのイベントをオンライン配信することで、距離や日程の問題で参加できなかった受験生のフォローにもなるため、ターゲットを逃す機会を減らせるかもしれません。
学生の悩みに寄り添ってくれる
受験生にとって大学進学は、人生を送るうえでも重要なターニングポイントとなるため、大学選びに対して慎重にならざるを得ません。
そのため、大学によっては、学生の悩みに関する相談を受け付ける場を設けていることがあります。受験生の悩みに寄り添うことで、自然と大学への信頼感を高めていくことにもつながります。
学生生活を送るうえで不安に感じることや、キャリア相談を気軽にできる場を整えましょう。専用窓口や定期的なイベントを設けるほか、SNSを活用したオンライン相談も効果的です。
学生の行動を知ることが志願者確保のカギになる
一方的に大学が伝えたい情報のみを小出しにしても、受験生の心を掴むことはできません。学生生活ひとつ切り取るとしても、食堂やカフェなど憩いの場について知りたい層や在学中に取得を目指せる資格、サポート体制などを知りたい層など多様です。
志願者を確保するためには、受験生の需要を理解したうえで供給を行う必要があります。アンケートで需要を知ることも可能ですが、無意識のうちに求めている潜在的な需要を知ることは困難です。
受験生が求めているものを知るには、受験生である学生の行動が参考となります。
学生の大学選びの過程を想像する
学生はどのようにして大学選びを行うのか、過程や思考パターンをイメージしましょう。早い時期から特定の大学へ進むと決めて勉学に励んでいる学生もいれば、世の中には進路を決める時期になっても自分のやりたいことが見つからず悩んでいる学生もいます。
彼らがどのような過程で大学を絞り込み、大学について下調べを行うのか考えましょう。多くの学生が参考とする情報源は、以下のものが挙げられます。
・大学のホームページ
・在学生・OBの様子や活躍
・インターネット上の口コミ
・オープンキャンパスなどのイベント
一部を除くと情報収集から大学選びまでの期間が短く、短期的に決めなくてはならない学生が大半です。その影響として入学後にギャップを感じやすくなります。
中には良い意味でのギャップを感じる学生もいますが、事前情報との相違はできる限りないほうが望ましいでしょう。
学生との接触回数を増やす
情報提供の方法や頻度も再考すべきポイントです。情報のつまった冊子を用意し、資料請求した学生にのみ情報を提供する従来の方法では、定員割れリスクを高めはしても軽減することはないでしょう。
また、興味を持っている程度の状態であれば、資料請求自体が億劫に感じるものです。中にはホームページ上で手軽にダウンロードできるところもありますが、ダウンロード時に専用のメールフォームへ個人情報の入力を求める方法は好ましくありません。
これらの方法は大学のイメージをアップさせるとは言えず、志望意欲につながる行動を起こすことは難しいでしょう。
インターネット上で資料を手に入れられるというデジタルの活用自体は、効果が期待できます。資料請求・提供のみにこだわらず、たとえば動画配信やSNSアカウントの作成など、以下のように学生が今知りたいと思う情報をリアルタイムで発信することが重要です。
・動画投稿サイト…学校紹介動画の配信・イベントの様子を配信
・SNS…オープンキャンパスなどイベントの告知・小ネタの提供
動画投稿サイトやSNSは学生側から「いいね」やコメントなどのアクションも期待でき、反応や効果を手軽に把握できるメリットがあります。これらデジタルツールを活用し、届けるべき情報や届けたい情報を、タイミング良く発信しましょう。
保護者や高校の先生に向けた情報発信も視野に入れる
大学選びの決定権は、実は保護者や高校の先生が持っているケースも珍しくありません。大学に関する情報を十分に持たない学生にとって、身近でアドバイスをしてくれる存在は大きいものです。
大学の魅力を発信するときは、学生向けのものだけではなく、保護者や高校の先生に向けた内容も盛り込むことをおすすめします。
すでに大学生を経験したことのある保護者・先生には学生当時のイメージが先行してあり、固定されたイメージを元に子どもへアドバイスをする可能性があります。場合によっては志願者の取り逃しや入学後のギャップにつながりかねないため、大学側から最新情報を提供してイメージの向上や情報のアップデートを行うべきです。
たとえば、以下のような、デジタルツールを用いての情報発信が挙げられます。
・動画サイトの生配信機能で保護者参加の合同説明会を開催
・保護者や高校の先生向けの大学紹介動画の配信
・保護者・先生向けのホームページの作成
オンラインであれば交通費や移動時間の制限なく合同説明会に参加したり、情報を得たりすることができるため、忙しい保護者や先生にも大学の最新情報を難なく得てもらえるでしょう。
まとめ
情報ひとつとっても、発信の仕方を工夫している大学は、入試広報においてしっかりと差別化ができています。大学独自の課外活動やほかの大学にはない施設、取り組みなどを前面に押し出し、積極的にアピールしましょう。
近年はデジタルツールより情報を得ている若者が多いため、資料請求以外にオンライン上で情報を提供する工夫も必要です。SNSなどを利用し、学生との接触頻度を増やすなど親近感を持たれる広報活動が求められます。
さらに保護者や高校の先生に向けた情報提供をすることで、マインドシェアの拡大を促すことを意識しましょう。