地方私立大学が持つ課題とは?学生募集の際に知っておきたい解決策

出生率の低下などもあり、大学では全国的な定員割れが起こっています。特に立地的なメリットをアピールしにくい地方の私立大学は、今後も継続的に志願者獲得のための工夫が求められるでしょう。 この大学を選ぶ必要があったと受験生に思わせる魅力がなければ、将来的に深刻な志願者数の減少へつながります。 今後、地方私立大学が生き残り、志願者数を増やすために向き合うべきことは何か、課題の具体例を解決策とともにご紹介します。


この記事は約8分で読み終わります。

地方私立大学の課題とはどういうものか

大学同士の競争激化は避けられない昨今、地方私立大学が向き合うべき課題は、複数挙げられます。不利な理由として地方イコール立地におけるアドバンテージでは、と想像しがちですが、実際は他にも重視すべき点があります。

この項目では、地方私立大学が向き合うべき3つの課題について解説します。

上位校への一極集中

地方は18歳未満の人口(地元大学への進学が期待できる母数)が少ない事情があります。総務省統計局の発表によると、平成30年時点で15~64歳人口の割合が過去最低の59.7%でした。

18歳未満の資料がなく15歳未満の人口情報ですが、44の都道府県で若者が高齢者の人口を下回っている状況です。沖縄県を除いて地方ほどその差は顕著で、たとえば秋田県は2倍近くの差があります。

出典:総務省統計局「人口推計(2018年(平成30年)10月1日現在)」

大手リクルート企業が行った調査においても大学進学率自体は上昇を見せているものの、現状・将来の予測ともに18歳の人口減少が大きいと目されています。あくまで推測ですが、2020年からの5年間を見ても10万人以上の減少です。

出典:リクルート進学総研マーケットリポート「18歳人口予測 大学・短期大学・専門学校進学率 地元残留率の動向」

このような事情があり、地方では大学同士で学生を取り合わざるを得ません。必然的に経済力・アピール力のあるマンモス校や著名人を多く輩出している偏差値の高い大学など、一部の上位校へ志願者が集中してしまいます。

首都圏や大都市へ学生が流出

生活の利便性を求めて、首都圏や大都市への若年層の流出は年々増加傾向が続いています。大学進学を機に上記の都市部へ移り住む人も多く、地方私立大が志望者を集めにくい原因のひとつです。

首都圏や大都市の大学と比較すると、地方私立大は以下2つの難点があります。

・通学しにくい(駅から徒歩圏内とは限らない)
・大規模校ほど露出が少ない

首都圏や大都市の大学の多くは、最寄り駅から徒歩圏内であったり、数分おきに巡回するバスが近隣を走ったりと通学しやすい環境です。一方の地方私立大は駅から徒歩圏内とは限らず、学校運営のバスを利用したり自転車や自家用車で通学したりと、立地的なメリットを感じにくい場合があります。

さらに経済的にも潤沢な都市部の大規模校のように、メディア露出を頻繁に行っていないところが大半です。そのため大学の魅力を表面的にしか知らない学生たちは、「通いやすくてテレビや広告でよく見かける有名大学」へ集中してしまいます。

しかし、海洋や河川研究に力を入れている大学や広大な敷地を必要とする農業高校など、理由があって地方を選んでいる大学も存在します。見方やアピール方法を変えれば、地方の通いにくさを差し引いても魅力ある大学だと周知することは不可能ではありません。

まずは自校の認知率を向上させるための広報に注力し、その先につながる質の高い発信(保護者も興味を持つ広告など)を行いましょう。

デジタル活用の遅れ

インターネットでいつでも欲しい情報が得られる現代では、デジタルツールを活用した広報が欠かせません。大学も力を入れるべき宣伝方法ですが、現実的には十分に活用できていない大学が目立ちます。

原因は、大学内のノウハウ不足や人手不足です。デジタル活用で遅れが生じている大学は、志願者獲得の場において以下のようなデメリットを被っています。

・学生が欲しいときに情報を得られない
・リアルタイムの情報発信ができていない
・大学や学部の魅力が伝わりにくい

学部自体を迷っている学生と学部を決めて大学選びで迷っている学生は、求める情報が異なります。学部の紹介やオープンキャンパスの開催情報など、学生の状態に合った情報をピンポイントで届けることはもちろん、常に最新情報を得られる場を提供することが重要です。

また、動画などのデジタルツールは資料のみでは分からない魅力やその場の雰囲気を知ることができるメリットがあります。近隣のライバル校が意欲的に動画配信を行っている場合、魅力のアピールで大きな差をつけられてしまうでしょう。

イベントの告知動画など、こまめに情報発信を行うことが成功のコツです。

目次へ

地方私立大学の課題を解決するために、まず何から取り組むべきか?

地方私立大学が志願者獲得のために意識すべき問題は、前述のとおりアピール方法にもあります。課題解決のためには、宣伝方法の革新などさまざまな工夫が必要です。

この項目では、地方私立大学が真っ先に取り組むべき3つのポイントをご紹介します。

地方ならではの魅力をアピールする

地域性にどのような魅力を引き出すかは、人によって異なるものです。都市部の利便性を魅力に感じる人もいれば、せわしなく治安が心配だと感じる人もいます。

地方私立大学である立地の特性を生かし、まずは「この地域に根差すからこそ得た魅力」をアピールしましょう。

具体的な例として、以下のものが挙げられます。

・喧噪から離れ、腰を落ち着けて学べる
・広大な土地を活用した設備の充実
・都市部では実現困難な幅広い学科・コース
・物価・家賃が安く生活しやすい環境

都市部の大学は学部数や学科数が少なく、特定の分野に特化している魅力がある反面、多様性を感じにくい環境とも言えます。広大な土地の中に複数の学部や学科、コースを設置できる地方私立大学は、設備の充実はもちろん豊富で幅広い交友関係を得られる環境が魅力です。学部の異なる友人がいるほど、学生は見識を広げるチャンスを得られます。

また、地方ゆえの物価や家賃の安さは大きなメリットです。さらに大学側が住まい探しのサポートやアルバイト情報の提供など学生生活の支援を充実させれば、より魅力が高まります。

入試広報の手段を再選択する

大学のホームページや大学情報誌の資料請求のみに対応している大学は、現在の状況を踏まえると志願者増加のチャンスを逃しています。

入試広報の手段を改めて見直し、時代に合った改革を行いましょう。広報媒体は紙に留まらず、デジタル化がおすすめです。デジタル化は以下のようなメリットが挙げられます。

・情報の差し替え・追加が容易
・オープンキャンパス申し込みなど次のアクションへ誘導しやすい
・いつでもどこでも手軽にチェックしてもらえる
・ユーザー情報を掌握しやすい

一度印刷してしまうと、誤字や脱字はもちろん、オープンキャンパスの開催情報や入試要項など重要な情報の差し替えや更新も困難です。デジタルであれば社会情勢に合わせて予定変更が起こっても即座に情報を更新でき、学生の混乱を最小限に抑えられます。

デジタル資料内に動画やオープンキャンパスへの申し込みボタンを紐づけておけば、動画再生やオープンキャンパス参加など、次のアクションへストレスなく移行してもらえます。紙媒体の場合、改めてメールで申し込んだりハガキを送ったりしなければならず、アクションにつながりにくいリスクがあります。

また、スマホでいつでも手軽にチェックしてもらえる点は大きなメリットです。紙の資料はかさばりますが、常時持ち歩いているスマホでチェックできるデジタル資料は、紙媒体では読み飛ばされるような部分も通学中など隙間時間に見てもらえます。

アクセス解析などでユーザーデータを掌握できるため、反響に合わせた更新もできます。

新たな注力エリアを発見する

地方私立大学に限らず、地元出身の志願者を優遇する制度を設けている大学は珍しくありません。人口減少にさらされている現代では、さらに一歩進んで県内以外の注力エリアを発見することが求められます。

近隣県なら就職のしやすさ、遠方県なら地元企業との連携をアピールすると効果的です。

地元や近隣県には、専門性の高い教育カリキュラムをプッシュし、就職に直結する能力を得られることを宣伝してみましょう。また、遠方の県には地元の有名企業と連携した講義や活動による「この地域でしか学べない・体験できない」4年間をアピールしてはいかがでしょうか。

地元の特産品を活用した商品開発など、産学連携は注目度の高い事業です。地方都市ゆえの特色を生かした貴重な経験や能力の育成は、惜しまず大々的に宣伝しましょう。

目次へ

地方私立大学における学生募集の解決策

志願者を増加させるために、地方私立大学ができる最大の工夫は広報の改革ですが、それらを支える魅力あるカリキュラムやイベントも欠かせません。

開催するイベントにおいても、以下のように学生募集につながる工夫が可能です。

リアルイベントと並行したオンラインイベントの開催

動画投稿サイトの生放送配信機能などを活用し、リアルイベントと並行してオンラインイベントも開催してはいかがでしょうか。参加者は移動時間や交通費の心配なく気軽に入退室ができ、大学側も会場のキャパシティ以上の参加を募ることができます。

インターネットを活用することで、大学に関心のある学生を取りこぼすことなく惹きつけられるでしょう。イベント後も閲覧できるようにすると、他大学との日程重複もデメリットになりません。

他大学との連携によるイベント

中小企業が合同で会社説明会を行う光景は、全国各地で見られます。合同で行うと会場コストを抑えられるうえ、他社と比較しやすいなどのメリットがあるためです。

大学の広報においても、合同開催は効果的です。複数の大学で連携し、合同説明会を開催しましょう。学生側は一か所への交通費と移動時間で効率良く大学を回れるため、多くの来場が期待できます。単独開催以上の学生へアプローチできるチャンスです。

目次へ

まとめ

地方私立大学は、広報面で首都圏や大都市とは異なるアプローチ方法が求められます。同時に、都市部では浸透しているデジタルツールを活用した新たな宣伝活動の取り入れも必要です。

地方にあることをいかに魅力として発信するか、発信内容はもちろん、より多くの学生が気軽に見てくれるような工夫を施しましょう。動画配信やSNSによるイベント告知など、時代に合った広報活動で効率良く自分たちの大学をアピールしてください。