“マーケティング”という言葉は、主にビジネス用語として耳にする機会が多いものです。簡単に説明すると「企業がサービスや商品をより多くの顧客に知ってもらい、効率的に売るための戦略や活動」といった意味で使われます。
しかし、マーケティングは商品やサービスを扱う企業のみが使う言葉ではありません。大学の広報においても、マーケティング戦略を練るべき場面は多々あります。
大学のマーケティングでまず考えるべきこと
マーケティングは、入念な準備と綿密に練った計画のもと成功するものです。ここでは、大学入試広報でマーケティングを行う上で、最初に考えるべき項目を2つ紹介します。
目標と途中経過確認プロセスの明確化
まず、なぜ大学を広報するのか、広報することで得たい効果はなにかを明確にします。何事も始める前にはゴールを決めておくほうが具体的な行動を取りやすいものです。
大学入試広報でも、目標やゴールはとても大切です。「大学をもっと多くの人に認知してもらいたい」「志願者確保を早期に実現したい」など、目指すゴールは大学によってさまざまでしょう。
また、目標には具体的に数値まで設定することが望まれます。例えば、「志願者確保を早期に」とはどんな数字がどれくらいになればそのゴールが達成されたことになるのか、同時に途中経過をどんな指標でみていくのかが重要です。また、途中経過指標の増減要因把握もしておかなければ広報活動によって得られた結果なのか、偶然なのか判断しかねる事態に陥ってしまい、今後の施策再現性を高めることはできなくなってしまいます。
ターゲットと学生像の明確化
次に、ターゲットを明確化しましょう。ターゲットを決めずにただ闇雲に広報活動を行ってしまうと、コストをかけたわりには思った効果が出なかったという残念な結果をもたらしてしまう可能性があります。
「近隣の駅に大学のポスターを貼って認知度向上を図ろう」と考えた大学があるとします。この大学がすでに地元で充分知られている存在であれば、ポスターは大きな意味をなさないものとなってしまいます。
続いては、すでに地元の高校生にはよく知られている大学が、県外の高校生へ〇〇学部の認知を広めたいと考える場面を想像してください。この場合はターゲットが“近隣県の〇〇学部に興味がありそうな高校生”と明確化されているため、どのような手法を用いて広報活動を行うべきか、明確になっていきます。また、「将来◯◯な仕事をしたいと思っている」や「まだ具体的な仕事のイメージはないが心理学に興味がある」など、『具体的な求める学生像』を明確にしておくこともおすすめします。
「駅に大学のポスターを貼っても、すでに大学を知っている人の目にしか止まらない」「それなら例えば、卒業生と在学生の対談の様子を撮影した〇〇学部動画を作成してWebサイトの内容を充実させた上でLINEやSNSで近隣4県の高校生に情報を届けよう」といった具合に、より効果的な戦略を練られるようになるわけです。
大学の広報マーケティングで考えるべき従来の広報方法
ここまでは大学の広報マーケティングを始める前の準備についてまとめました。続いては実際の広報活動について、従来からある手法とこれからの手法を比較して解説していきます。
紙媒体
大学の認知度向上を図る手法として、以前からよく活用されてきたのが紙媒体を使った広報活動です。これはDMやパンフレットによる個別発送での告知などが挙げられます。
紙媒体を使った広報活動のデメリットは、効果把握がしにくく改善施策を明確にしにくいこと。媒体や手法によってその費用は異なりますが、一般的により目立つ場所に広告を掲載する、もしくは数多く発送するほどコストは高くなるものです。また度々発送することで同じような情報が、受験生の手元に届いているケースも多くあるようです。さらには、そのコストにみあうものなのかは判断が非常に難しいのが実情です。
また、掲載してもターゲットに見られているかどうかの判別しにくいというのも、紙媒体におけるデメリットのひとつとなります。
大学の資料請求も、紙媒体を使った広報活動ですが、資料請求をした高校生全員が大学に出願するわけではないため、これも広報活動として効率的なものとはいえない部分があります。
加えて、資料請求も印刷費や郵送費などでコストがかかる点がネックです。
リアルイベント
実際に大学まで足を運んでもらうリアルイベントも、広報活動の手法としてよく活用されています。
これは、大学側は志願者と直接コミュニケーションを取る機会ができ、また志願者側も大学をより詳しく知れるという点で双方にメリットがある手法と考えられてきました。
しかし、直接大学に訪問するという面では、参加ハードルは少し高いものになるでしょう。特に遠方に住むターゲットをいかに呼び込むかという点において、より魅力的な集客方法を計画しなければならないという側面があります。
また、近頃は新型感染症の流行により、外出を控える動きが加速しています。このような背景を受け、今後リアルイベントの開催はますますハードルの高いものとなっていくことでしょう。
そこで考えられているのが、オンラインイベントの開催です。ネット回線とスマートフォンさえあれば参加できるオンラインイベントなら、遠方からでも容易に参加が可能になります。さらに、アーカイブとして残すことで、あとからでもイベント内容を閲覧できるため、日程の都合を合わせる必要がないという点も大きなメリットといえます。
リアルイベントでは距離や時間等の問題で1日に1大学しか訪問できないことも珍しくありません。しかし、オンラインならこの制約もなくなり、高校生としてもより効率的な情報収集が可能となるのです。
これから取り入れるべき!大学の新しい広報マーケティング
従来の大学入試広報におけるマーケティング手法には、デメリットもあることがわかりました。それでは最後に、新しい広報マーケティングの手法について解説していきましょう。
LINEを使って学生との接触を増やす
少し前まで情報発信ツールとしてメジャーな存在だったもののひとつに、メールが挙げられます。しかしいまやメールでは、高校生への効果的な情報発信は難しくなってきました。
その理由は、高校生があまりメールを使わなくなっていることから、「自分のメールアドレスを知らない」という人も増えているのが現状です。
これを踏まえ、昨今では大学入試広報のマーケティング手法として、LINEを使う大学が増えてきました。
マーケティング手法としてLINEを使うメリットは、なにより高校生に利用者が非常に多いこと。メールだと迷惑メールフォルダに入ったり、開封されなかったりといった問題も起こり得ますが、LINEであればターゲットに対して着実にメッセージを届けることができ、開封・閲覧サイトへの遷移やアンケートやチャットボット操作などを通じて学生の「情報収集」までも可能となります。
学生の志望意欲を判別する
従来の広報活動では、すべての高校生に一律で同じ内容の情報を発信することしかできませんでした。志望モチベーションが強い高校生から、弱い高校生までいる中で、それぞれに発信する内容を個別に選べないのは、非効率な広報活動だったといっても過言ではありません。
前述したLINEなどで学生の興味関心や個人情報を取得し、志願者一人ひとりの志望意欲を分析。それらに合わせて最適な情報を配信することが可能です。
志願意欲に合った情報は、志願者にとって非常に役立ちます。興味のある内容を効率的にチェックできるようになると、志願者の志望モチベーションアップにもつながっていく可能性も高くなります。
まとめ
大学の広報マーケティング手法は、時代とともにその選択肢を増やしています。今回紹介したLINEを活用する広報活動を取り入れる大学も、少しずつメジャーになっていくでしょう。
入念な準備と綿密な計画を踏まえた上で行うマーケティングは、現場に良い影響をもたらす可能性があります。
従来の手法では、ターゲットに直接情報を発信できるものとは言い切れないのが実情です。
時代の流れに沿った新しいマーケティング手法を、いますぐ取り入れてみてはいかがでしょうか。